2024年4月21日
親が亡くなって空き家になったが、相続人は皆それぞれの家がある。相続財産を確認していたら、遠隔地に土地や建物を持っていることがわかった。そんな時どうすればよいのか悩みますよね。売りに出せば直ぐに買い手がつくような不動産ならいいのですが、必ずしもそうはいかないのが現実です。今回は、空き家を相続することになってしまったらどうすればよいのか考えてみましょう。
何はともあれ、まずはその空き家にどれほど価値があるかを確認しましょう。どれくらいの金額で処分出来るかがわかれば、遺産分割協議もスムーズになります。ここで不動産屋さんが値段を付けてくれて、まあその内買い手も付くだろうとなればその値段を参考に遺産分割協議を進めれば問題ないでしょう。
しかし、不動産が全く売れる見込みがない、値段を付けることが出来ないとなってしまうと話は一変します。何せ不動産というのは税金も維持費もかかるのですから、売れる見込みのない不動産を持つことはマイナスにしかなりません。こうなるといよいよ誰が貧乏くじを引くかの押し付け合いになりがちです。
では改めて遺された空き家にどう対処すべきなのか考えていきましょう。まずにその空き家が“そのまま売買や賃貸には出来ない”のか“もう修繕してもどうにもならない”のかを確認しましょう。空き家を見てもらった不動産屋さんにどれくらい直せば商品になるか、その修繕にざっくりいくらかかるのか、修繕した後はどのくらい値段が付くのか聞いてみるのがいいでしょう。採算が取れそうであれば、それを踏まえて遺産分割協議を進めればOKです。とはいえそのまま売買するより手間も費用も時間もかかりますので、そこも含めた協議が必要になります。
ではもう使い物にならない、修繕しても採算が取れない場合はどうすればいいのでしょうか。結論から申し上げますと解体が一番安全で負担も少ないと思われます。家というのは人が住まないと急激に老朽化が進みます。雪国や港町は特に顕著で、あっという間に廃墟同然になり果ててしまうのです。老朽化が進んだ空き家は通行人や隣家に被害を及ぼす危険があり、訴訟や賠償に発展しかねません。そうなると解体するしかなくなりますが、老朽化が激しいと解体費用が高くつくことがありますので、結局早期に解体した方が安上がりなケースが多いのです。
ここで気になるのは税金です。ご自分で不動産をお持ちの方はご存じかもしれませんが、土地の税金は建物があると安くなる優遇措置があります。建物の税金がそう高くない場合、解体してしまうと固定資産税が嵩んでしまうとお思いの方もいることでしょう。ですが、こちらもまた長期的に見た場合間違いなく解体した方がお得と言えます。2015年に空き家対策特別措置法という法律が制定されました。その中に“特定空き家”という空き家の分類があります。これはわかりやすく言えば倒壊の恐れがある、景観を著しく損ねているなどと認められた空き家が対象になり、この特定空き家に分類されると固定資産税の優遇措置の対象外となってしまうのです。更に2023年6月にこの特別措置法が改正され、“管理不全空き家”も優遇措置の対象外になることが決まりました。管理不全空き家というのはわかりやすく言えば特定空き家予備軍です。よって、空き家を放置し、老朽化させてしまうと建物も土地も100%の税金がかかることになってしまうのです。
また、管理費用も建物の有無でだいぶ違ってきます。建物であれば屋根、窓、外壁、庭、水道管等補修個所は多く、その分費用は高額になります。反面土地だけであれば、年に2~3回草刈と不法投棄がないかの確認程度でよく、費用も手間も大幅に抑えることができます。加えて、建物を解体して空き地にしてしまえば売却が出来る場合も多いです。特に住宅地の場合、土地の売却額で解体費用がある程度賄えてしまう可能性もあります。
更に最終手段として、国庫に帰属させるという制度が2023年の4月から施行されました。これは相続や遺贈で土地を取得してしまった場合に、①建物がなく②抵当などがついておらず③その他非該当要件を満たしていない という土地を国に返還出来る制度になります。審査料や負担金がかかるため、売却どころかお金を払って回収してもらうことになりますが、税の支払や管理の手間を考えると早々に国庫に返還させた方がよいかもしれません。
このように、買い手が付く見込みのない空き家であれば早々に解体してしまった方が手間も費用も少なくて済む場合がほとんどです。とはいえ、解体費用は決して安いものではありませんし、土地の税金は毎年発生します。解体費用を誰が賄うのか折半するのか、相続は誰にするのか、それを踏まえて遺産の分割はどうするのか等を相続人でしっかりと協議する必要があることに変わりありません。
では、相続出来る財産がなく、空き家と負債だけで相続放棄せざるを得ない場合はどうすればいいのでしょうか。確かに基本的には相続放棄をすれば問題はありませんが、落とし穴があるので注意しなければなりません。
民法940条を見てみましょう。
【相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。】
とありますね。相続放棄をした人が放棄した財産を占有、この場合その建物に住んでいたまたは管理していた場合、次の相続人が見つかるまで管理し続けなければならないということを意味します。相続放棄をした時に遠方に住んでいた場合などは問題ありませんが、頭の片隅には置いておいた方が良いでしょう。また、相続放棄は単独で出来ますが、他の相続人が居る場合はその前に相談しておくとトラブルが少なくなります。
参考になったでしょうか。実は今回記載した内容の中で、空き家法や民法の改正、国庫の帰属制度などは2023年度に入ってから施行された新しい法や制度になります。それだけ空き家の増加が社会問題になっているということですね。言うまでもありませんが、空き家になる前に処分してしまうのが一番です。皆様もご両親や自らの不動産について、この機に一度よく考えてみてはいかがでしょうか。